導入期のレッスン:ワークブック何使う?(2)


導入期のレッスン:ワークブック何使う?(1)」では、譜読みの導入のためのワークブックについて書きました。ここでは、私のレッスンで主に使用しているワークブックについて書いていきます。

ワークブックはいつ使うか?

某先生の「今でしょ!」ではありませんが、使うタイミングというものがあると思います。

私は、基本的には、「書いて覚える」タイプのワークブックは、その生徒さんが小学生になってから使うようにしています。

小学生になると、「勉強する」という姿勢や心構えも培われてくると思います。書いたり読んだりしながら習得することにも興味を持ち始める時期ではないでしょうか?

幼児用のワークブックも数多く市販されていますが、私は、幼児期は、「書いて覚える」より「体得する」ことを優先していますので、基本的にはワークブックは使用しません。

幼児期には、音符を書く準備として「まる」を書いたり、五線に「ドレミ」などと音符を書いたりすることに時間を割くより、音符やリズムを見て、どのように歌うのか、あるいは演奏するのかが「わかる」ようになることに重点を置いています。

※幼児期のレッスンでは「音楽とあそうぼう リズムワークブック」(江口寿子著、共同音楽出版社)を使用していますが、このテキストは、いわゆる学習用ワークブックとは異なりますので、除外して述べています。

ワークブック何を使うか?

私のレッスンでは、小学生になって、より「勉強する」意識も高まっていく時期に、初めてワークブックを使用しますが、何を使うか?が、次のモンダイです。

たくさんのワークブックが市販されていますが、私は、選定の目安として
  • 早い段階から、ヘ音記号の譜読み課題が出てくる
  • ひらがな主体で書かれている
  • 文字や譜例が程よく大きい
  • 和音を扱っている
を挙げています。

これまでに、いろいろなワークブックを使って試行錯誤を繰り返してきましたが、現在は、主に、次のものの中から、生徒さんの個性や年齢によって使い分けています。

WAKU WAKUおんがくドリル(汐巻公子著、ヤマハ)
上下に分冊されています。「1日1枚ハギトリ式」とうたっているように、ドリル形式で楽典の学習を進めていくようになっています。ちょっと「公文式」に通じるものがあるなと思いました。

私のレッスンでは、「1レッスンに1枚」を目安に使っています。生徒さんにとっては「1枚終わるまでがんばろう!」という具体的な目標となり、メリハリがついているように感じます。もちろん、時には「今日は2枚がんばってみよう!」などと目標設定もしています。

ちなみに、お値段もたいへんお求め安くなっています。(←これも重要なポイントですね!)

ピアノスタディ ワークブック(ヤマハ)

ヤマハオリジナル教材ですが、一般にも販売されています。可愛いキャラクターが案内役となっているなど、こどもたちの興味を引くよう配慮されていると思います。リズムパターン練習や、音楽に合わせてリズムを打ったりする課題も含んでいるので、ソルフェージュレッスンにも使うことができます。

このテキストの気に入っている点は、「先生にクイズを出そう」コーナーがあることです。生徒さんたちは「教えられる」という受け身の立場ばかりではなく、時に「教えたい」と思っています。そんなこども心をクスグルような内容も取り入れられています。

アルフレッド・ピアノライブラリー「聴音と音楽ドリル」(全音)

これ、面白いです。ただ、こどもによって向き不向きがあるかもしれません。私のところでは、男の子に好評です。

このテキストは、タイトルが示す通り「聴きながら楽典を習得する」ようになっています。

例えば、「スタッカート」の学習では、先生が弾くフレーズを聴きながら、まずは「スタッカート」か、そうではない(スラー)かを判断することから始めます。その後、2小節のスレーズを聴き、どの音がスタッカートで演奏されたかを、楽譜の該当する音符に、記号「・」で記入していきます。記譜の勉強にもなります。

同様に、「クレッシェンドとデクレッシェンド」の学習では、2小節のスレーズを聴き、クレッシェンドで演奏されていたか、デクレッシェンドであったかを、楽譜に < または > の記号を書いていきます。

このように、音楽記号を、ただその意味を覚えるだけでなく、「」から習得するようになっています。私の求めるものにピッタリのドリルです。


こどものバイエルワークブック「ミッキーといっしょ」(ヤマハ)



バイエルの併用ワークブックとしてではなく、小学校1〜2年生からピアノを習い始める生徒のために、ピアノの導入テキストも兼ねて使っています。

小学校1〜2年生は、すでに学校の音楽の授業で、ある程度の長さの曲を歌ったり、楽器で弾いたりしていますので、幼児用のピアノ導入テキストでは「幼い」感じがするのではないでしょうか。

このテキストには、「きらきら星」「みつばちマーチ(こいぬのマーチ)」「メリーさんのひつじ」など、小学校低学年で弾きたくなるような曲が含まれています。それらの曲には素敵な伴奏も付いているので、歌うだけでも楽しめます。

このテキストは、歌う、リズムを打つ、弾く、書く、という要素がバランス良く組み込まれているので、この1冊で、ソルフェージュ、演奏、楽典が学べるようになっています。
バイエルの併用教材として作られているので、早い時期に2点ハ音以上の音符が出てくるなど、使い勝手が良くない部分も多少ありますが、学習順序を変えるなどして工夫すれば、低学年の生徒の導入書として使えると思います。


以下には、導入期用ではありませんが、よく使っているもの、面白いなと思ったワークブックの中から数点をご紹介します。



ジュニアクラスの楽典問題集(森本琢郎・池田恭子著、ドレミ楽譜)

「ジュニアクラス」となっていますが、大人の初心者の方でも十分使えるものだと思います。ジュニア用になると、説明書きの字体や譜例が小さかったりするものが多いのですが、このテキストは、程よい大きさなので、とても見やすいです。さらに、A4サイズよりひとまわり大きなサイズで100ページ程度なので、無理なく学習を進めることができます。見た目に分厚いと、それだけでプレッシャーというか、負担に思ってしまうジュニアの生徒さんが多いですから、このテキストは重宝しています。

グローバー・ピアノ・ドリルブック(ヤマハ)

中学生以上の、ポピュラー音楽専門学校進学を目指している生徒さんに使用しています。音名を英語で書くようになっている点や、コードネームを学べるようになっている点が、目的にかなっています。また、ピアノ初心者用テキストであるグローバーシリーズの併用ドリルにもかかわらず、見た目に「こどもっぽさ」がないので、中学生でも十分使えます。

Musicianship for the Older Beginner (バスティン)

バスティンシリーズの年長者向けのドリルで、東音企画より販売されています。全て英語で書かれています。英語で音楽を学ぶということに興味のある高校生〜大人の方向けでしょうか。私のところでは、このようなテキストを用いて英語でのレッスンも可能です。
このテキストに興味を持った理由は、私のところには、将来、アメリカで音楽の勉強をしたいと希望している生徒さんがいるからです。今から英語で楽典の勉強を始めても良いかな〜と思い、つい最近、取り寄せてみました。いずれ、使用してみての感想をアップしたいと思います。


ピアノの先生のためのアクティブ・トレーニング「コードネームを弾きこなそう」(ヤマハ)

ワークブックではありませんが、ご参考のために。
ピアノの先生のためではなく、ポピュラー音楽志向の生徒に使用しています。バンドでキーボードを担当している生徒さんにも、コードの成り立ちを理解し、さらに鍵盤上で素早くポジションが取れるようにと使用しています。また、幼稚園教諭や保育士志望の方のためにも、伴奏付けのためのコードトレーニング用として使用しています。「ピアノの先生のための」とうたっているだけあって、少々レベルが高いので、生徒さんのレベルに合わせて適宜省略したり、わかりやすく説明を加えたりしてレッスンしています。


以上、レッスンで主に使用しているワークブックについて書いてみました。

ワークブックは何を使うか。今だに試行錯誤の連続ですが、生徒さん一人ひとりの個性や好みを見極めながら、できるだけ最適なものを選ぶよう心がけています。


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